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札幌高等裁判所 昭和57年(ネ)307号 判決 1983年11月29日

控訴人(原告)

小松實

被控訴人(被告)

アメリカン・インターナショナル・アシュアランス・カンパニーリミテッド

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し金二〇〇〇万円及びこれに対する昭和五四年六月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張と証拠の関係は、証拠として、控訴人が、甲第八号証を提出し、当審における控訴本人尋問の結果を援用し、被控訴人が、右書証の成立は不知と述べたほかは、原判決事実摘示と同一(但し、原判決一三枚目表五行目の「同(2)、(3)は争う。」を「同(2)のうち、本件保険契約において、本件自動車の用述を自家用に限定する約定のあることは認めるが、その余の事実及び同(3)、(4)はいずれも争う。」と、その六行目の「同(4)」を「同(5)」とそれぞれ改める。)であるのでこれを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないのでこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、原判決一五枚目裏九行目の「第三」の次に「本件保険契約において、本件自動車の用述を自家用に限定する約定のあることは当事者間に争いがないところ、」を加え、その一六枚目表二行目の「原告は」から三行目の「締結したこと、」までを削り、その裏二行目の「原告本人尋問」を「原、当審における控訴本人尋問」と改め、同一七枚目表末尾三行目の「<2>」のあとに「本文」を付け加えるほかは、原判決理由説示と同一であるのでこれを引用する。

なお、控訴人が、築館の依頼を受けて、控訴人の子伸二に本件自動車で馬鈴薯や土壌硬化剤を運搬させたことが、本件自動車を営業としての運送の用途に供したといえるかについて付言するに、この点につき控訴人は、原、当審において、右運搬は、伸二の自動車運転の練習をかねて、単に好意により行なつたもので、報酬を得るつもりは全くなかつたという趣旨の供述をするが、原判決理由第三項の認定に供された各証拠、成立に争いのない乙第五号証及び弁論の全趣旨によると、築館は、当時個人として青果物の仲買業を営んでいたほか、その出資していた新日本化学工業株式会社が農業用施設の建設業を営んでいたものであるところ、同人の控訴人に対する馬鈴薯や土壌硬化剤の運搬の依頼は、右の各営業のためになされたものであること、伸二が行なつた右物品の運搬は、その運搬量(本件自動車の積裁量は四トンであるが、これに見合う量の右物品を積載、運搬)運搬回数(本件事故発生時の分を除き、昭和五二年八月二九日から同年一〇月六日までの間に七回)及び運搬区間(はじめの四回目までの上富良野町から旭川市まで片道約四〇キロメートル、あとの七回目までの同市から標茶町まで片道約二六〇キロメートル道路間の距離は一般公知の事実である―)等からみて、かなりの時間と労力を要する仕事であること、また控訴人は、築舘とはかなり古くからの知り合いで、同人から本件自動車を一般より多少低廉な代金で買受けたけれども、右のような運搬を好意により無償で引受けるほど特別の恩義を受けたようなことはなかつたことがそれぞれ認められ、これらの諸事情と前記各証拠とを総合すると、本件自動車による右物品の運搬は、本件事故までに報酬額の具体的な取極めはなされていなかつたけれども、相当額の報酬の支払を前提に、営業として反復継続してなされたものと容易に認定することができ、この認定に反する控訴人の前記供述は右の諸事情に照らして採用し難く、ほかにも右認定を動かすに足りる証拠はない。

二  よつて原判決は相当であるから民事訴訟法三八四条により本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 奈良次郎 藤井一男 中路義彦)

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